分院開設について
医療法人が新しく分院を開設し、新規診療所で保険診療を始めるには約4,5ヶ月ほどかかります。
なぜこんなにも時間がかかってしまうのでしょうか。
それは、4つの行政機関を経て手続きを行う必要があるからです。
その手続きを簡易的にまとめたのが下表になります。
手続きの名称 必要期間 行政機関
定款変更の認可 約2,3ヶ月 都道府県
分院の登記 約10日 法務局
開設許可申請・開設届 約2週間 保健所
保健医療機関の指定申請 受理されれば当日中 地方厚生局
※保健医療機関の指定申請は、新規診療所で保険診療を行う場合のみ
上記の表のように医療法人が分院の開設を行う場合、順番に4つの行政機関でそれぞれ手続きをする必要があります。
⓪ 事前相談
① 定款変更の認可(都道府県)
② 分院の登記(法務局)
③ 開設許可申請、開設届(保健所)
④ 保健医療機関指定申請(地方厚生局)
この順番に手続きを行っていきます。
弊所が基本的に扱うのは上記の地方厚生局に対して行う手続きまでです。
しかし場合によっては、保健医療機関の指定申請後に行う、施設基準の届出、生活保護法指定等医療機関申請や労災保険指定申請の手続きも請け負います。
分院開設のおおまかな日程
下記が、診療所側と弊所が行う手続きの日程表になります。
この表は順調に手続きが進んだ場合の日程表であるため、
これより余裕を持ってさらに1,2ヶ月もっておくのがお勧めです。
(表)
⓪ 事前相談
必ず工事をする前に、図面(各室の用途、寸法・面積等を記入したもの)をご持参の上、保健医療担当へご相談する必要があります。修正を受け図面の許可が下りた後、工事をします。
また、その際に歯科診療所の名称も必ず確認する必要があります。
使えない名称もあります。
① 定款変更の認可申請
各都道府県に定款変更の認可申請を行います。特にこの手続きが時間かかり、最低でも2,3ヶ月はかかります。かつ、これより以前に作成することになる書類の数や収集するべき資料の数が膨大であるため、余裕を持った早めの準備が必要となります。
また届け出と違い認可であるため都道府県の審査があり、この審査が非常に厳しいものとなっています。勿論、審査を通過しないと書類に効力は発生せず、提出したからといって定款変更ができるわけではありません。
定款変更の認可の手続きの手順
⓪ 資料収集、書類作成←特に手間と時間がかかります。
① 申請書を作ります。
② 仮申請(一通り中身を作って添付資料をつけて印鑑を押していないもの)を出します。
③ 事前審査という形で都道府県が中身をチェック
⇒追加の資料を求められる、各資料の説明を求められる、などのやり取りがあります。
特に審査が厳しいため、事前準備が必要です。
④ 内容に問題がないと「本申請を出してください」というご案内が来ます。
⑤ 判子がついた本申請書類を提出します。
⑥ 担当者が見て、係長が見て、課長に回り、局長に回り、都道府県知事の印が押されて出てきます。
⑦ 決済が終わったら認可書が出てきて、手続が終わります。
定款変更認可に必要な書類の例
・定款変更に関わる社員総会の議決
・理事会の議決を採った議事録
・新しい定款の案
・変更前の予算、変更後の予算(変更前後における予算書)
・設立後2年間の分院の事業計画
・開設する診療所の土地や建物の書類
・管理者となる者の歯科医師履歴書、印鑑登録証明書、免許証、就任承諾書
上記はあくまで一例であり、さらに必要になる書類があります。
また、都道府県によって定款変更の認可申請に必要な書類は変わってきます。
必ず新規に開設する都道府県の必要書類の確認を行う必要があります。
② 分院の登記
定款変更の認可がおりたら、その認可証を基にして所轄の法務局に登記が必要になります。
必要期間は、約10日間です。
分院の登記の手続きの手順
⓪ 書類作成
① 認可書到達から2週間以内に登記をします。
② 認可を出した役所に、登記が終わりましたと届け出を出します。
登記に必要な書類の例
●変更登記申請書
・社員総会議事録
・理事会議事録
・歯科医師免許証写し
・印鑑証明書
・認可証の写し
●登記事項変更届
・登記事項証明書
③ 開設許可申請、開設届
登記が終わったら、保健所に開設許可申請、開設届の手続きを行います。
一般的な必要期間は、約2週間です。
医療法人として分院を開設する場合、保健所の開設許可が必要となります。開設許可申請を保健所に提出し、許可がおりたら実際の開設届を出すことによって診療所として医療行為ができるようになります。
※開設許可申請や開設届についても、元々医療法人が分院を出すことについて都道府県の認可を受けているので、保健所では比較的審査の基準が緩やかです。
保健所での開設許可申請、開設届の手続きの手順
0. 事前相談
必ず工事着工前に図面(各室の用途、寸法・面積等を記入したもの)をご持参の上、保健医療担当へ相談する必要があります。
また、その際に診療所の名称も確認が必要です。
1. 許可申請
許可希望日のおおむね3週間前(標準処理期間:15日)までに申請する必要があります。
検査の日程をこの時に決定します。
2. 保健所職員による立ち入り検査
現地に伺い、申請内容に相違がないか確認します。開設後なることもあります。
立入検査とは、設備、医薬品・文書の管理体制、危機管理など、適正な医療を行う場として適正かどうかを直接職員が出向いて確認する検査です。
3. 開設許可
許可申請書の副本及び許可書を交付できます。
(開設届出時の受け取りも可能です。)
4. 歯科診療所開設
5. 開設届
開設後10日以内に提出する必要があります。
書類を確認の上、不備がなければ開設届の副本を交付されます。
保健所での開設許可申請、開設届の手続きにおける必要書類の例
【開設許可申請】
・定款及び、法人の登記事項証明書
・土地及び建物の登記事項証明書(土地又は建物を賃借する場合は、賃貸借契約書の写しも添付する必要があります。ただし、ビルの一室を賃借する場合は、土地は不要。)
・敷地の平面図
・敷地周囲の見取図
・建物の平面図(各室の用途を明示すること。縮尺100分の1以上のもの)
・エックス線診療室放射線防護図(※エックス線を使用する場合)
・案内図
【開設届】
・医師(歯科医師)免許証
・臨床研修終了登録証
・履歴書
・案内図
・平面図
・賃貸借契約書
あくまで一例であり、各保健所で異なるため、
必ず所轄の保健所で必要書類を確認する必要があります。
④ 保健医療機関の指定申請の手続き
保険診療を行う場合、地方厚生局に保健医療機関の指定申請の手続きを行います。また、受理されれば当日中には手続きが完了します。
厚生局での保健医療機関の指定申請の手続きで必要となる書類の例
・保健医療機関指定申請書
・管理医師と勤務医全ての保険医登録票
・診療所の看板や外観などの写真
・保健所で受領印が押印された開設届の写し
→ 医師・歯科医師免許証
→ 臨床研修修了登録書
→ 履歴書
→ 賃貸借契約書
→ 平面図
→ 駅から建物までの案内図
厚生局に手続きに行くと、提出書類を確認され、幾つか質問をされます。
【質問の例】
・歯科医師会に入っているか
・院外処方か院内処方か、もし院外処方なら敷地内に薬局がないか
・近くの調剤薬局の場所や、診療所が入っている建物の入り口や、その建物内の他のテナントは何か
保険医療機関指定申請書が受理されたら、保健医療機関・保管薬局指定通知書が翌月上旬に医療機関・薬局宛に郵送されます。保健医療機関コードは後日電話確認も可能です。
⑤ 施設基準等の届出
その後に必要に応じて特殊な指定申請や施設基準等の届出をします。
施設基準とは、医療法で定める医療機関および医師等の基準の他に、健康保険法等の規定に基づき厚生労働大臣が定めた、保険診療の一部について、医療機関の機能や設備、診療体制、安全面やサービス面等を評価するための基準になります。
歯科の場合、特殊な指定申請、施設基準等の代表的な参考例が下記になります。
施設基準(クラウン・ブリッジ維持管理料、歯科麻酔管理料など)
・ 保険外併用療養費(金属床による総義歯の提供の実施など)
・ 酸素の購入価格に関する届出
・ 特殊な指定申請
・ 生活保護法に基づく指定医療機関及び指定介護機関の指定等
・ 労災保険指定医療機関指定申請
※あくまでこれは一例です。
実際は沢山の項目があり、その内容は以下のように多岐にわたります。
大きく分けた施設基準
・人員配置に関連する事項(歯科医師、歯科衛生士の人数や所定の講習を受けた人員の数など)
・医療機関の実績に関連する事項(患者数や治療例など)
・設備に関連する事項(滅菌や衛生に関する器具機材、切削器具の数など)
・組織に関連する事項(管理体制や院内周知の状況など)
開設する診療所の環境に応じて対応することになります。
参考に、厚生労働省が発表している歯科の施設基準の名称一覧表をご覧ください。
■厚生労働省が発表している歯科の施設基準の名称一覧表
→施設基準の名称 一覧表(歯科)
■令和二年四月一日から新たに創設された施設基準
・ 歯科麻酔管理料
(1) 常勤の麻酔に従事する歯科医師が配置されていること。
(2) 麻酔管理を行うにつき十分な体制が整備されていること。
・ 睡眠時歯科筋電図検査
(1)当該療養を行うにつき、十分な経験を有する歯科医師が1名以上配置されていること。
(2)当該保険医療機関内に歯科用筋電計を備えていること。
・ 顎関節人工関節全置換術
(1)歯科麻酔に係る専門の知識及び2年以上の経験を有し、当該療養に習熟した医師又は歯科医師の指導の下に、
主要な麻酔手技を自ら実施する者として全身麻酔を200症例以上及び静脈内鎮静法を50症例以上経験している常勤の麻酔に従事する歯科医師が1名以上配置されていること。
(2)常勤の麻酔に従事する歯科医師により、麻酔の安全管理体制が確保されていること。
まとめ
このように分院開設には、4つの行政機関をまたいで手続きを行います。
そして、その手続きは、膨大な量の書類を収集、作成、修正をし、かなりの時間をかけて行っていくことになり、とても大変です。
非常に手間のかかる分院開設手続きは、医療法人手続きの専門行政書士におまかせください。
事前相談、書類作成・提出まで丸ごとサポートいたします。