医療法人移転サービス


医療法人が診療所の移転をする場合は、診療所廃止・開設の手続きをする必要があります。
事前相談から診療開始まで約5~6ヵ月程かかります。

それではなぜ診療所を移転するだけでも、こんなに時間がかかるのでしょうか。

それは、診療所を移転するには診療所廃止と新規開設の2つの手続きをしなければならないからです。

そして、手続きをするための作成書類は非常に多く、その書類作成のために事前に収集する書類は膨大な量になります。

注意点: 移転前の保険診療を継続して受けるためには、2km以内の移転が必要です。

移転先の診療所が既存の診療所から2km以内であれば、移転先がこれまで受信していた患者の徒歩による日常生活圏内にあるとみなされ、引き続き保険診療が受けることができます。
しかし移転先の診療所が、移転前の診療所から2kmを超えてしまいますと、移転とみなされず新規診療とみなされ、1か月間保険診療ができません。

移転をする際のスケジュール


下記の表が、ご依頼いただいた際の診療所側で行うこと・弊所で行う手続きの大まかなスケジュールになります。


※弊所が行うのは、基本的に保険医療機関指定申請の手続きまでです。

しかしご相談によっては、保険医療機関の指定申請後に行う、施設基準等の届出、生活保護法指定医療機関指定申請、労災保険指定医療機関申請の手続きも行います。

移転手続きの詳細


医療法人で診療所を移転するには、診療所廃止と新規診療所開設の手続きを、4つの行政機関をまたいで行う必要があります。

  1. 事前相談

必ず工事をする前に、図面(各室の用途、寸法・面積などを記入したもの)をご持参の上、保健所医療担当の担当者へ相談する必要があります。修正を受け図面の許可が下りた後、工事に取り掛かります。

  1. 定款変更の認可申請

各都道府県に定款変更の認可申請を行います。この認可申請の必要期間は、最低でも2,3か月です。

診療所を移転する際には、定款を変更するという手続きに対して都道府県の認可が必要になります。

特にこの手続きが時間がかかります。
最低でも2,3カ月はかかり、かつ、手続きを始める前に作成する書類の数や収集すべき資料の数が膨大であるため、余裕を持った早めの準備が必要となります。

また届出と違い認可であるため、提出書類の審査があります。


そして、この審査が非常に厳しいものとなっています。
審査を通過しないと書類に効力は発生せず、提出するのみでは定款変更ができません。

 廃止と開設の定款変更の認可手続きの手順

⓪ 資料収集、書類作成←特に手間と時間がかかります。

① 仮申請(押印していない書類一式)を提出します。

② 事前審査として都道府県が中身をチェック
→追加の資料を求められる、各資料の説明を求められる、などのやり取りがあります。特に審査が厳しいため、事前準備が必要です。

③ 内容に問題がないと「本申請を提出してください」というご案内が来ます。

④ 押印した本申請書類を提出します。

⑤ 審査が終わったら都道府県の印が押されて認可書が返されます。

 定款変更認可に必要な書類の例

・ 定款変更に関わる社員総会の議決
・ 理事会の議決を採った議事録
・ 新しい定款の案
・ 変更前の予算、変更後の予算(変更前後における予算書)
・ 設立後2年間の診療所の事業計画
・ 移転する診療所の土地や建物の書類
・ 管理者となる者の履歴書、印鑑登録証明書、歯科医師免許証、就任承諾書 

 等です。

上記はあくまで一例であり、さらに書類が必要になる場合があります。
また、都道府県によって定款変更の認可申請に必要な書類は変わってきます。

必ず新規に移転する先の都道府県で、必要書類の確認を行ってください。

  • 2.歯科診療所の登記

都道府県に変更登記申請書を提出し、法務局に歯科診療所の登記申請をし、登記が終了次第、登記事項届を提出します。必要期間は、約10日間。
定款変更の認可がおりたら、その認可証を基にして所轄の法務局に登記が必要になります。

 歯科診療所の登記の手続きの手順

⓪ 書類作成

① 認可書到達から2週間以内に登記をします。

② 認可を出した役所に、登記が終わりましたという旨の登記事項届を提出します。

 登記に必要な書類

【変更登記申請書を提出する際に必要になる添付書類】

・ 社員総会議事録
・ 理事会議事録
・ 歯科医師免許証写し
・ 印鑑証明書

【登記事項届を提出する際に必要になる添付書類】

・登記簿謄本

  • 3.開設許可申請・廃止届・開設届 届出

登記が終わったら、保健所に開設許可申請、廃止届・開設届の手続きを行います。
一般的な必要期間は、約2週間。

診療所の移転手続きは、廃止と開設の手続きをしないといけません。

まず、医療法人として歯科診療所を開設するために、保健所に開設許可申請を提出します。

許可がおりたら廃止届、開設届を出すことによって既存の診療所を廃止し、次の診療所へ移転となります。

 →廃止届を既存診療所の廃止後10日以内

 →開設届を新規診療所の開設後10日以内に届け出る必要があります。

※開設許可申請や開設届についても、元々医療法人が診療所を出すことについて都道府県の認可を受けているので、保健所では比較的審査の基準が緩やかです。

 保健所での開設許可申請、開設届の手続きの手順

⓪ 事前相談
→工事をする前に図面(各室の用途、寸法・面積等を記入したもの)をご持参の上、保健医療担当へ相談する必要があります。
また、その際に診療所の名称もご確認ください。

後々やり直しになると大事に至るので、図面の確認や診療所の名称は工事を行う前に必ず行ってください。

① 許可申請
→許可希望日のおおむね3週間前(標準処理期間:15日)までに申請する必要があります。検査の日程をこの時に決定します。

※保険所の手続き関しては、所轄の保健所ごとにルールが違うので、都度相談が必要です。
※保健所に開設許可の申請を出してから開設の許可が下りてくるまで、一般的には4日から1週間ほどかかります。

② 保健所職員による立入検査
→立入検査とは、設備、医薬品・文書の管理体制、危機管理など、適正な医療を行う場として適正かどうかを直接職員が出向いて確認する検査です。開設後になる場合もあります。

③ 許可
→許可申請書の副本及び許可書を交付できます。(開設届出時の受け取りも可能です。)

④ 既存診療所廃止、新規診療所移転

⑤廃止届・開設届
→廃止後10日以内、開設後10日以内に提出する必要があります。書類を確認の上、不備がなければ開設届の副本を交付されます。

※要確認自分用

 保健所での開設許可申請、開設届の手続きにおける必要書類等

【開設許可申請書を提出する際に必要になる添付書類の例】

・ 定款及び、法人の登記事項証明書
・ 土地及び建物の登記事項証明書
→土地又は建物を賃借する場合は、賃貸借契約書の写しも添付すること。ただし、ビルの一室を賃借する場合は、土地については不要。
・ 敷地の平面図
・ 敷地周囲の見取図
・ 建物の平面図(各室の用途を明示すること。縮尺100分の1以上のもの)
・ エックス線診療室放射線防護図
→平面図及び立面図。縮尺50分の1又は25分の1のものとし、壁及び鉛の厚さを記入すること。
※エックス線を使用する場合のみ
・ 案内図

 等です。

【開設届を提出する際に必要になる添付書類の例】

・ 歯科医師免許証
・ 臨床研修終了登録証
・ 履歴書
・ 案内図
・ 平面図
・ 賃貸借契約書

 等です。

※各所轄保健所によって異なります。

そのため、必ず提出する先の保健所で必要書類を確認する必要があります。

  • 4.保健医療機関の指定申請の手続き

保険診療を行うためには診療所として開設した医療機関が所轄の地方厚生局から保険医療機関としての指定を受ける必要があります。

廃止する診療所で保険診療を行っていた場合は、保険医療機関廃止届を提出し、
移転する診療所で保険診療を行う場合は、厚生局で保険医療機関としての指定申請手続きをします。

注意点

〇 移転前の保険診療を継続して受けるためには2km以内の移転が必要です。

移転先の診療所が既存の診療所から2km以内ですと、移転先がこれまで受診していた患者の徒歩による日常生活圏域の範囲内にあるとみなされ、引き続き保険診療が受けることができますが…

診療所から2kmを超えてしまいますと、移転とはみなされず新規開設とみなされ、1ヶ月間保険診療ができません。

また、移転先の診療所が既存の診療所から2km以上離れたところに移転する際に、保険診療の申請をすると新規指定となります。

新規指定は新規指定月初日の開庁日が提出期限となり、その日に提出できなかった場合は、また次の月の初日の開庁日に提出となります。

例)

9月下旬に保健所の開設許可が下りた後、保険医療機関の申請を申請期間の10月1日に行ったとします。

移転先の診療所が既存の診療所から2km以内の場所に移転する場合、保険医療機関指定がなされるのが11月1日となり、10月1日~31日の間は自由診療しか行えず、保険診療はできません。
移転先の診療所が既存の診療所から2km以内の場所に移転する場合は、11月1日に保険医療機関指定がなされていても、10月1日から、保険診療ができることになります。
また、新規指定のように月初めの開庁日に提出しなければならないということはなく、厚生局に指示された期日までであればいつでも申請が可能となります

厚生局での保健医療機関の指定申請の手続きで必要となる書類の例

・保健医療機関指定申請書
・管理医師と勤務医全ての保険医登録票
・診療所の看板や外観などの写真
・保健所で受領印が押印された開設届の写し
 → 医師・歯科医師免許証
 → 臨床研修修了登録書
 → 履歴書
 → 賃貸借契約書
 → 平面図
 → 駅から建物までの案内図

※各所轄保健所によって異なります。
そのため、必ず提出する先の保健所で必要書類を確認する必要があります。

〇 厚生局での審査は保健所と比べて厳しく、
手続きの際に提出書類を確認と共にいくつか確認の質問をされます。

厚生局での質問の例

・歯科医師会に入っているか
・院外処方か院内処方か、もし院外処方なら敷地内に薬局がないか
・近くの調剤薬局の場所や、診療所が入っている建物の入り口や、その建物内の他のテナントは何かなども聞かれ、駅から建物までの案内図、平面図、診療所の看板や外観などの写真などを見せるよう求められる場合もあります。

指定申請書が受理されたら、保健医療機関・保管薬局指定通知書が翌月上旬に医療機関・薬局宛に郵送されます。保健医療機関コードは後日電話確認も可能です。

  • 5.施設基準等の届出の手続き

その後に必要に応じて特殊な指定申請や施設基準等の届出をします。

施設基準とは、医療法で定める医療機関および医師等の基準の他に、健康保険法等の規定に基づき厚生労働大臣が定めた、保険診療の一部について、医療機関の機能や設備、診療体制、安全面やサービス面等を評価するための基準になります。

歯科の場合、特殊な指定申請、施設基準等の代表的な参考例が下記になります。

● 施設基準(クラウン・ブリッジ維持管理料、歯科麻酔管理料など)

・ 保険外併用療養費(金属床による総義歯の提供の実施など)
・ 酸素の購入価格に関する届出
・ 特殊な指定申請
・ 生活保護法に基づく指定医療機関及び指定介護機関の指定等
・ 労災保険指定医療機関指定申請

あくまでこれは一例です。

実際は沢山の項目があり、その内容は以下のように多岐にわたります。

・人員配置に関連する事項(歯科医師、歯科衛生士の人数や所定の講習を受けた人員の数など)

・医療機関の実績に関連する事項(患者数や治療例など)

・設備に関連する事項(滅菌や衛生に関する器具機材、切削器具の数など)

・組織に関連する事項(管理体制や院内周知の状況など)

開設する診療所の環境に応じて対応することになります。

参考に、厚生労働省が発表している歯科の施設基準の名称一覧表をご覧ください。

厚生労働省が発表している歯科の施設基準の名称一覧表
→施設基準の名称 一覧表(歯科)

● 令和二年四月一日から新たに創設された施設基準

・ 歯科麻酔管理料

(1) 常勤の麻酔に従事する歯科医師が配置されていること。

(2) 麻酔管理を行うにつき十分な体制が整備されていること。

・ 睡眠時歯科筋電図検査

(1)当該療養を行うにつき、十分な経験を有する歯科医師が1名以上配置されていること。

(2)当該保険医療機関内に歯科用筋電計を備えていること。

・ 顎関節人工関節全置換術

(1)歯科麻酔に係る専門の知識及び2年以上の経験を有し、当該療養に習熟した医師又は歯科医師の指導の下に、

主要な麻酔手技を自ら実施する者として全身麻酔を200症例以上及び静脈内鎮静法を50症例以上経験している常勤の麻酔に従事する歯科医師が1名以上配置されていること。

(2)常勤の麻酔に従事する歯科医師により、麻酔の安全管理体制が確保されていること。

診療所移転における特に重要な注意点


【院内掲示義務】

診療所内の入り口や受付など、患者のみやすい場所に次に掲げる事項を掲示する必要があります。

・ 管理者の氏名
・ 診療に従事する歯科医師の氏名
・ 歯科医師の診療の診療日及び診療時間

○○デンタルクリニック
管理者名_________
診療所日時及び診療に従事する歯科医師名
     10:00~13:00 14:00~19:00
月曜、火曜     歯科 担当医______     歯科 担当医______
木曜 金曜     歯科 担当医______     歯科 担当医______
土曜        歯科 担当医______     歯科 担当医______
※休診  水曜、日曜、祝日

【医療機関としての安全対策】

医療安全の確保に関する事項について、歯科診療所にも、医療安全の方策を講じる事が義務づけられています。

医療に係る安全管理のための基本的考え方・方策について、従業者へ周知徹底し、意識の向上を図ることが目的とされています。

【医療機能情報提供制度】

医療機関の管理者は、患者が医療機関の適切な選択が出来るように、医療機関に関する情報を都道府県知事に報告すると共に、その情報を医療機関内で閲覧できるようにすることが義務づけられています。

【医薬品、医療品についての管理体制】

医薬品は麻薬や冷所保存品など、薬事法に基づいて医薬品の保管規制に従い、適切な保管方法で管理する必要があります。
医療機器等:清潔な状態に保ち、保守管理が十分にする必要があります。

【危機管理体制】

クリニック内には、スプリンクラーか消火器を設置が義務付けられています。消化器の設置数はクリニックの広さや構造によって変わります。ご確認ください。

【健康管理体制】

職員の定期健康診断実施など、適切な健康管理体制が確立されているか
等の項目に関して判定されることになります。

【必要文書の管理】

カルテ、診療所開設届、医療従事者の本人確認書類のコピー、職員の健康診断書、職員の職員研修記録書類、医療に関わる安全管理や院内感染対策の指針に関する文書、

医薬品の安全な使用法に関する文書、X線装置などの各種装置の備付届、各種検査記録(X線装置の定期測定記録など)、処方箋の控え 等

重要な書類は保管しておかなければなりません。

以上のように、重要な注意点を簡潔に並べましたが、この中には保健所の職員による立入検査としてもチェックされる項目もあります。十分に対策をしておくことが必要です。

まとめ


このように歯科診療所の診療所移転は、診療所廃止と新規開設の2つの手続きを、4つの行政機関をまたいで手続きを行います。

移転手続きは、膨大な量の書類を収集・作成・修正し、かなりの時間をかけて行うことになり、非常に大変です。

非常に手間のかかる移転手続きは、医療法人手続きの専門家におまかせください。

事前相談、書類作成・提出まで丸ごとサポートいたします。