個人診療所移転手続きについて

個人診療所を移転する際には、移転手続きではなく、診療所の廃止手続きと新規診療所の開設手続きを行う必要があります。

注意点

移転前の保険診療を継続して受けるためには2km以内の移転が必要です。
移転先の診療所が既存の診療所から2km以内ですと、移転先がこれまで受診していた患者の徒歩による日常生活圏域の範囲内にあるとみなされ、引き続き保険診療が受けることができます。

しかし、移転先の診療所が移転前の診療所から2kmを超えてしまいますと、移転とはみなされず新規開設とみなされ、1ヶ月間保険診療ができません。

個人診療所移転のスケジュール

下の表が個人診療所移転する際の、診療所側が行うこと・手続きの内容、に分けたスケジュールです。
事前相談から診療開始まで3、4ヶ月程かかります。

(表)

弊所が基本的に扱うのは上記の地方厚生局に対して行う手続きまでです。

しかし場合によっては、施設基準の届出、生活保護法指定等医療機関申請や労災保険指定申請の手続きも請け負います。

手続きの詳細

⓪ 事前相談

必ず工事をする前に、図面(各室の用途、寸法・面積等を記入したもの)をご持参の上、保健医療担当へご相談する必要があります。修正を受け図面の許可が下りた後、工事をします。
また、その際に歯科診療所の名称もご確認ください。使えない名称もあります。

※保険医療機関廃止届は保険診療をしていた場合のみ、保険医療機関指定申請は保険診療をする場合のみです。
※特殊な指定申請、施設基準等届出は必要な場合のみです。

① 開設許可申請・歯科診療所廃止届・歯科診療所開設届(保健所)
 
診療所を移転するには、保健所に開設許可申請を行った後に、既存の診療所を廃止する歯科診療所廃止届と、診療所として開設するための歯科診療所開設届を提出しなければなりません。

廃止届と開設届は既存診療所の廃止後10日以内、新規診療所の開設後10日以内に届け出る必要があります。

※歯科診療所開設届を提出する前か提出し終えた後に、現地に職員が立入検査に来ます。立入検査とは、設備、医薬品・文書の管理体制、危機管理など、適正な医療を行う場として適正かどうかを直接職員が出向いて確認する検査です。

● 提出書類の例

・歯科診療所廃止届
・歯科診療所開設届
・歯科医師免許証
・臨床研修終了登録証
・履歴書
・案内図
・平面図
・賃貸借契約書等

※既存の診療所に診療用エックス線装置がある場合、廃止届を届け出ます。
 また、移転先の診療所でX線装置を使う場合は、X線装置の届出なども必要なため、一緒に提出します。

② 保険医療機関指定申請

既存の診療所を廃止する際に保険診療をしていた場合は、保険医療機関廃止届を提出し、
新規診療所を開設する際に保険診療をする場合は、厚生局で保険医療機関としての指定申請を行います。

保留

注意点

移転前の保険診療を継続して受けるためには2km以内の移転が必要です。
移転先の診療所が既存の診療所から2km以内ですと、移転先がこれまで受診していた患者の徒歩による日常生活圏域の範囲内にあるとみなされ、引き続き保険診療が受けることができますが、
移転先の診療所が既存の診療所から2kmを超えてしまいますと、移転とはみなされず新規開設とみなされ、1ヶ月間保険診療ができません。

また、移転先の診療所が既存の診療所から2km以上離れたところに移転する際に、保険診療の申請をすると新規指定となります。新規指定は新規指定月初日の開庁日が提出期限となり、その日に提出できなかった場合は、また次の月の初日の開庁日に提出ととなります。

例として4月1日に保健所の開設許可が下りた後、保険医療機関の申請を申請期間の4月2日に行ったとします。その場合、保険医療機関指定がなされるのが5月1日となり、4月1日~31日の間は自由診療しか行えず、保険診療はできません。
移転先の診療所が既存の診療所から2km以内の場所に移転する場合は、5月1日に保険医療機関指定がなされていても、4月1日から、保険診療ができることになります。そして保険医療機関指定申請は、新規指定のように月初め1日に提出しなければならないということはなく、厚生局に指示された期日までであればいつでも申請が可能となります。

移転先が2km以上の場合

移転先が2km以内の場合

※厚生局に提出を指示された範囲内であれば指定なし

↑保留

提出書類の例

・保険医療機関廃止届
・保険医療機関指定申請書
・保健所で返された廃止届、開設届の写し
・履歴書
・歯科医師免許証
・臨床研修終了登録書、
・駅から建物までの案内図
・新規診療所の平面図
・新規診療所の看板や外観などの写真
・賃貸借契約書等があります。

厚生局での審査は保健所と比べて厳しく、手続きの際に提出書類を確認と共にいくつか確認の質問をされます。

厚生局での質問の例

・歯科医師会に入っているか
・院外処方か院内処方か、もし院外処方なら敷地内に薬局がないか
・近くの調剤薬局の場所や、診療所が入っている建物の入り口や、その建物内の他のテナントは何かなども聞かれ、駅から建物までの案内図、平面図、診療所の看板や外観などの写真などを見せるよう求められる場合もあります。

その後、指定申請書が受理されると、保険医療機関・保管薬局指定通知書が翌月上旬に医療機関・薬局宛に郵送されます。保険医療機関コードは後日電話確認も可能です。

③ 施設基準等の届出

その後、開設する手続きで必要に応じて特殊な指定申請や施設基準等の届出をします。

施設基準とは、医療法で定める医療機関および医師等の基準の他に、健康保険法等の規定に基づき厚生労働大臣が定めた、保険診療の一部について、医療機関の機能や設備、診療体制、安全面やサービス面等を評価するための基準になります。

歯科の場合に必要となる、特殊な指定申請、施設基準等の代表的な参考例が下記になります。

・施設基準(クラウン・ブリッジ維持管理料、歯科麻酔管理料など)

・保険外併用療養費(金属床による総義歯の提供の実施など)

・酸素の購入価格に関する届出

あくまでこれは一例です。

実際は沢山の項目があり、その内容は以下のように多岐にわたります。
・人員配置に関連する事項(歯科医師、歯科衛生士の人数や所定の講習を受けた人員の数など)
・医療機関の実績に関連する事項(患者数や治療例など)
・設備に関連する事項(滅菌や衛生に関する器具機材、切削器具の数など)
・組織に関連する事項(管理体制や院内周知の状況など)

開設する診療所の環境に応じて対応するのが望ましいです。

参考に厚生労働省が発表している歯科の施設基準の名称一覧表をご覧ください。

厚生労働省が発表している歯科の施設基準の名称一覧表
            ↓    ↓    ↓     ↓     
ichiran-shika.pdf (mhlw.go.jp)

※令和二年四月一日から新たに創設された施設基準

歯科麻酔管理料
(1) 常勤の麻酔に従事する歯科医師が配置されていること。
(2) 麻酔管理を行うにつき十分な体制が整備されていること。

睡眠時歯科筋電図検査
(1)当該療養を行うにつき、十分な経験を有する歯科医師が1名以上配置されていること。
(2)当該保険医療機関内に歯科用筋電計を備えていること。

顎関節人工関節全置換術
(1)歯科麻酔に係る専門の知識及び2年以上の経験を有し、当該療養に習熟した医師又は歯 
  科医師の指導の下に、主要な麻酔手技を
自ら実施する者として全身麻酔を200症例以上及び静脈内鎮静法を50症例以上経験して 
  いる常勤の麻酔に従事する歯科医師が1名
  以上配置されていること。
(2)常勤の麻酔に従事する歯科医師により、麻酔の安全管理体制が確保されていること。

ご依頼いただく際にご提出頂きたい書類

医療法人の診療所をご依頼いただく際に弊所にご提出いただきたい書類の例は、
下記よりご確認ください。

→診療所移転をご依頼いただく際にご提出いただきたい書類の例?

個人歯科診療所の移転における、重要な注意点

【院内掲示義務】

診療所内の入り口や受付など、患者のみやすい場所に次に掲げる事項を掲示する必要があります。

・ 管理者の氏名
・ 診療に従事する歯科医師の氏名
・ 歯科医師の診療の診療日及び診療時間

○○デンタルクリニック
管理者名_________
診療所日時及び診療に従事する歯科医師名
     10:00~13:00 14:00~19:00
月曜、火曜     歯科 担当医______     歯科 担当医______
木曜 金曜     歯科 担当医______     歯科 担当医______
土曜        歯科 担当医______     歯科 担当医______
※休診  水曜、日曜、祝日

【医療機関としての安全対策】

医療安全の確保に関する事項について、歯科診療所にも、医療安全の方策を講じる事が義務づけられています。

医療に係る安全管理のための基本的考え方・方策について、従業者へ周知徹底し、意識の向上を図ることが目的とされています。

【医療機能情報提供制度】

医療機関の管理者は、患者が医療機関の適切な選択が出来るように、医療機関に関する情報を都道府県知事に報告すると共に、その情報を医療機関内で閲覧できるようにすることが義務づけられています。

【医薬品、医療品についての管理体制】

医薬品は麻薬や冷所保存品など、薬事法に基づいて医薬品の保管規制に従い、適切な保管方法で管理する必要があります。
医療機器等:清潔な状態に保ち、保守管理を十分にする必要があります。

【危機管理体制】

クリニック内には、スプリンクラーか消火器を設置が義務付けられています。消化器の設置数はクリニックの広さや構造によって変わります。ご確認ください。

【健康管理体制】

職員の定期健康診断実施など、適切な健康管理体制が確立されているか
等の項目に関して判定されることになります。

【必要文書の管理】

カルテ、診療所開設届、医療従事者の本人確認書類のコピー、職員の健康診断書、職員の職員研修記録書類、医療に関わる安全管理や院内感染対策の指針に関する文書、

医薬品の安全な使用法に関する文書、X線装置などの各種装置の備付届、各種検査記録(X線装置の定期測定記録など)、処方箋の控え 等

重要な書類は保管しておかなければなりません。

以上のように、重要な注意点を簡潔に並べましたが、この中には保健所の職員による立入検査としてもチェックされる項目もあります。十分に対策をしておくことが必要です。

まとめ

このように個人の歯科診療所を移転するには、既存の診療所を廃止し、新規診療所を開設する、という手続きを二つの行政機関をまたいでする必要があり、手続きは少々大変で時間もかかります。

移転する際は余裕を持った早めの準備をお勧めします。